Fisher-PriceのThe Candy Manオルゴールって、なぜこんなに甘いの?
オレンジ色の小さなラジオ。 でもラジオではなく、つまみを回すと甘いメロディが流れるオルゴール。 曲名は、The Candy Man。
見た目はラジオである。
右側にはチャンネルのような数字がある。
中央には大きなつまみがある。
持ち手にはFisher-Price。
かなりラジオ顔だ。
しかし、電波は受信しない。
ニュースも流れない。
天気予報も教えてくれない。
流れるのは、
The Candy Man。
ラジオのふりをしたオルゴール。
この時点で、もうだいぶかわいい。
これはラジオではなく、ラジオ型のオルゴール
Fisher-Priceの古いおもちゃには、分かりやすい顔がある。
子どもが見て、すぐに「これは何か」が分かる。
電話なら電話。
カメラならカメラ。
ラジオならラジオ。
でも実際には、これはラジオ型のミュージックボックスだ。
つまみを回す。
中のゼンマイが動く。
そして、ちいさなメロディが鳴る。
仕組みとしては素朴。
でも、その素朴さがいい。
BluetoothもWi-Fiもない。
そのかわり、電池切れの不安もない。
強い。
かなり昭和、いやアメリカなので1970年代である。
The Candy Manという曲名が、もう甘い
The Candy Manは、映画『Willy Wonka & the Chocolate Factory』で知られる曲だ。
日本では『夢のチョコレート工場』の名前で覚えている人も多いと思う。
タイトルからして甘い。
キャンディ。
チョコレート。
夢。
奇跡。
もう虫歯が心配になるくらい、言葉の温度が甘い。
でも、だからこそオルゴールに合う。
現実的すぎる曲は、オルゴールにすると少し困る。
「本日の会議資料」みたいな曲が鳴っても、誰も幸せにならない。
オルゴールには、少しくらい夢見がちな曲がいい。
The Candy Manは、その点かなり正しい。
Sammy Davis Jr.が歌うと、急に大人の甘さになる
この曲は、Sammy Davis Jr.のバージョンが大ヒットしたことでも知られている。
1972年にはBillboard Hot 100で1位になった。
子ども向けの甘い曲が、ショービジネスの大スターによって全米ヒットになる。
これが面白い。
Sammy Davis Jr.といえば、歌えて、踊れて、喋れて、存在感が強い。
いわゆるエンターテイナーのかたまりみたいな人だ。
そんな人がThe Candy Manを歌うと、ただの甘い曲では終わらない。
ちょっと洒落ている。
ちょっと大人っぽい。
でも、ちゃんと砂糖は多い。
ブラックコーヒーを飲みながらキャンディをすすめてくる感じである。
なかなか断りにくい。
1978年のFisher-Priceトイというところがいい
この個体には、1978年のFisher-Price表記が見える。
Fisher-Price Toys、Division of The Quaker Oats Company。
Made in U.S.A.
この並びだけで、古いアメリカントイ好きは少しうれしくなる。
本体は明るいオレンジ。
持ち手はクリーム色。
ラベルは少しくたびれている。
完全にきれいではない。
でも、そこがいい。
子どもが触って、誰かの部屋に置かれて、何度もつまみを回された気配がある。
古いおもちゃは、きれいすぎると少し緊張する。
これくらいの味があると、棚の上でちゃんと落ち着く。
表と裏で、ちゃんと二度楽しい
正面はとてもシンプルだ。
ラジオのような目盛り。
大きなつまみ。
音符のレリーフ。
おもちゃとしての分かりやすさがある。
一方、裏面にはThe Candy Manの世界がある。
キャンディ屋台。
子どもたち。
少しくすんだ紙の質感。
そして英語の歌詞。
この裏面があることで、ただのオレンジ色のラジオ型トイではなくなる。
曲の記憶を背負ったおもちゃになる。
こういう“裏まで楽しい”ものは、棚に置いたあとも飽きにくい。
最後に
Fisher-PriceのThe Candy Manオルゴールは、ものすごく派手なコレクターズアイテムではない。
でも、見れば見るほど味がある。
オレンジ色。
ラジオ型。
ゼンマイ。
The Candy Man。
Sammy Davis Jr.
そして1978年のFisher-Price。
小さな本体の中に、意外といろいろ詰まっている。
音が鳴るおもちゃは、飾るだけの雑貨とは少し違う。
鳴らした瞬間に、時間が動く。
ほんの数十秒だけ、部屋が少し甘くなる。
甘すぎるかもしれない。
でも、たまにはいい。
古いおもちゃには、それくらいの砂糖が似合うのである。